「債務整理」に関するお役立ち情報
新型コロナウイルスの影響で借金が返済できない場合の対応方法
1 新型コロナウイルスの労働者への影響
新型コロナウイルスの影響で,企業の売上の大幅減少,事業の停止,倒産などが各地で起こっており,多くの労働者の方が影響を受けています。
地方自治体による緊急事態宣言が出されるなど,経済情勢の見通しが厳しく,従来の水準に回復するには時間を要するものと考えられます。
そのような状況下で,これまでは問題なく借金やローンを返済できていた方であっても,「勤務先が倒産してしまった」「勤務先が休業になり給与が出ない」「勤務先の経営状態が悪化し,整理解雇されてしまった」「雇止めにあってしまった」「フリーランスで仕事をしていたが急に仕事が来なくなった」等の理由で,借金やローンを返済できなくなってしまうケースが相次いでいます。
2 勤務先の会社が倒産してしまった場合
これまでに未払いの給与があった場合,金融機関等の他の勤務先の債権者に比べれば,給与は優先して支払われるのが原則です。
勤務先が未払い給与の支払いをすることができない場合には,独立行政法人労働者健康安全機構から立替払いを受けられる「未払賃金立替払制度」があります(参照:独立行政法人労働者健康安全機構・未払賃金の立替払事業)。
3 勤務先の会社の事業が休止してしまった場合
新型コロナウイルスの影響で,勤務先の事業が休業となった場合には,給与が支払われない場合があります。
法律上は,労働基準法26条で「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては,使用者は,休業期間中当該労働者に,その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」とされています。
新型コロナウイルスによる事業の休止が「使用者の責に帰すべき事由による休業」になるかどうかは具体的事情に基づいて検討することが必要です(参照:厚生労働省・新型コロナウイルスに関するQ&A)。
4 解雇されてしまった場合
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,既に,多くの方が解雇や雇止めをされてしまっています。
解雇が不当である場合には,会社に対して解雇の無効を主張したり,不当解雇後の賃金を請求したりすることが考えられます。
経営不振を理由とする整理解雇の場合,①人員削減の必要性,②解雇回避努力,③人員選定の合理性,④説明や協議などの手続きの相当性の4要件を満たしていなければ不当解雇となると考えられています。
新型コロナウイルスによる経営不振を理由とする整理解雇であったとしても,例えば,無駄な経費の削減によって人員削減が避けられるような場合や,雇用関係助成金を活用するなどで雇用の維持を図る努力をしていないような場合には,不当解雇となる可能性が高いものと考えられます。
5 国の経済対策
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い各種の緊急経済対策が実施されており,個人向けには,特別定額給付金,休業者への緊急小口資金,失業者への総合支援資金等をはじめとする各種経済対策がとられています。
各種経済対策等があったとしても,借金の返済が難しい場合には,債務整理を検討する必要があります。
6 新型コロナウイルスの影響で借金の返済が難しくなった方の債務整理
借金が返済が難しくなった場合の債務整理として,大きく「任意整理」「個人再生」「自己破産」という方法があります。
⑴ 任意整理
任意整理は,貸金業者と交渉し,借金の減額や分割払い等を認めてもらうものです。
月々の返済の負担が軽くなりますので,コロナウイルスの影響で収入は減ったけれども多少の返済はしていくことができるという方にとっては,任意整理が有効である可能性があります。
一部の債権者を除くことが可能なので,ローンのある車を残すことや保証人に迷惑をかけないでできる場合が多いというメリットがあります。
⑵ 個人再生
個人再生は,裁判所を通じて,借金を大幅に減額してもらった上で,3~5年の分割払いにしてもらうものです。
一般的に,任意整理の場合よりも借金の減額の幅が大きいといえます。
個人再生が認められるためには,「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込み」が必要ですので,コロナウイルスの影響があったとしても,ある程度の収入が見込めなければなりません。
住宅ローンを約束どおり支払うことで,住宅ローンのある自宅を残すことができるメリットもあります。
⑶ 自己破産
自己破産は,裁判所を通じて,一部を除いた財産を換金し,それを債権者に分配した上で,残った借金を免除してもらうものです。
持ち家などの目ぼしい財産を手放さなさなければならないというデメリットがありますが,任意整理や個人再生とは異なり,今後の返済の必要がないため,コロナウイルスの影響で完全に失業してしまい,今後の収入が全く見込めない方であっても,利用が可能です(ただし,自己破産手続き自体にも費用がかかるため,一定の金額を準備する必要があります。)。
⑷ 弁護士へのご相談
このように,債務整理の方法は1つではなく,それぞれメリット・デメリットがあります。
どの方法が適しているかは,現在の財産の状況や,借金の金額,今後の収入の見込み等によって異なってきますので,借金問題に詳しい弁護士にご相談ください。
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